レンズを絵筆に、光を絵具に

写真やレンズの話をメインに紹介するブログ

F 0.95の世界:SPEEDMASTER 50mm

このレンズ、3代目が発売されますね(デジカメWatch)。マウントも増えますし、使う人が増えることでしょう。いろいろ書かれる前に、書いておかないと(笑)。
 
F値が0.95と明るいレンズなので、開放だと、ピントの合う範囲は花びら一枚ほどと、かなり狭く(被写界深度がかなり浅い)、ピントの合ったところ以外は、とろけるような写りになるのが特徴です。
 
一番不思議なのは、センターフォーカスフィルターを使うと、手前と奥の2箇所でピントが合うとこと。また、レンズの最短撮影距離は50cm ですが、より、近くに寄れるようになります。F0.95の効果なのか、そのメカニズムは不明です。
 
目 次
 

開放F値0.95

冬の薄暗い日、写真を撮る場所が見当たらない時に重宝するレンズです。
 
わずかな光でやわらかいボケ味の写真が撮れます。逆に、夏の晴れた日には、1/8000秒でも、すぐに露出オーバーになったりします。
 
レンズのF値は、レンズの明るさを表し、焦点距離を有効口径で割った値のことです。有効口径とは、無限遠にある点光源から入る平行光線からなる光線束の直径のことで、50mmなら、レンズの内径に近いですね。
 
50mm程度なら、口径を大きくすれば、F値を大きくできそうですが、そう簡単でもないようです。
そもそも、焦点距離が同じなら、有効口径だけで明るさ(F値)が決まるという単純な話に、若干の疑問があるのですが(笑)。
 

参考:なぜ焦点距離に比例する?:レンズのF値(1)

 

玉ボケを溶かすレンズ

明るいレンズなので、あふれるほどたくさんの玉ボケが期待できそうですが、開放ではむしろ少なめ。
なぜなら、無段階式絞りを絞っていくと、F2あたりから玉ボケがでてくるのですが、逆に開けていくと、その玉ボケは、F1あたりから、溶けて消えてしまうのです。
 
なので、全体として、とろけたような、にじむような、やわらかい雰囲気に仕上がります。カリカリッとした玉ボケは、あまり期待できませんね。
 

3代目が登場

中国のメーカー・中一光学のレンズです。開放F値は0.95ですが、ライカ(Leica Noctilux 50mm F0.95)と比べると、それほど高いレンズではありません。
 
日本では、2014年6月に、初代のレンズが発売されました。
 
2代目(SPEEDMASTER 50mm F0.95 M67)は、コーティングを改良し、フィルター径を67mmにしています。前記・後期型があり、2015年12月の後期型では、円形から花形フードになりました。
私のレンズは、2015年1月に買った、2代目の前期型です。
 
3代目(SPEEDMASTER 50mm F0.95 IIIとC)として、近々発売されます。光学性能の見直しによる画質向上と、キヤノンRFマウント、ニコンZマウントへの対応です。
 
 

デメリット

現代のレンズですが、マニュアルフォーカスです。とてもスポーツ撮影には向きません(笑)。
 
しかし、マニュアルフォーカスは私好みなんです。オートフォーカスは、シーンを乱暴に切り取るというか、美しい風景のカレンダーを破る・・・ような感じですかね。何百分の1秒で次々と、です。
 
一方、マニュアルフォーカスは、ていねいに絵を仕上げていく印象です。特にこのレンズは、ピントの合う範囲が極めて薄く、その位置によってずいぶん雰囲気が違うので、対象を見つめている時間も長いですし。
 
最短撮影距離は0.5mで、その時の最大撮影倍率が0.1倍と小さいので、マクロ的な撮影は苦手です。どうしても、という時には、接写リングを使います。
 
私のレンズは、2代目の前期型なので、逆光耐性は低く、太陽に向けるとフレアやゴースト(虹のようなリング)が出てきます。これは、鏡筒内側が黒塗り仕上げになっていないためのようです。後期型や3代目では改良されているかもしれません。
 
また、開放では周辺部の玉ボケがレモン形になる場合があります。
 

主な仕様など

レンズ名称:SPEEDMASTER 50mm F0.95
発売:初代は、2014年6月
レンズ構成:7群10枚
最短撮影距離:0.5m
マウント:SONY Eマウント他 (フルサイズ対応)
フォーカス:マニュアルフォーカス
絞り羽根 (枚):9
絞り:クリック感のない無段階式
最大撮影倍率:0.1倍
全長:87mm
質量:約720g

 

参考:中一光学 

 

撮影例

 下は、センターフォーカスフィルターを使った例。冬のタマアジサイの名残りです。多重露光や合成ではありません。

レンズの最短撮影距離は50cm ですが、センターフォーカスフィルターをつけると、より近くまで寄れます。

 

前方の花の名残りでは、その一部にしかピントがあっていないのに、よく見ると、後方の花の名残りにもピントがあっています。

これを「ダブルピントフォト」と呼ぶことにします(笑)。「遠近両用」だと、老眼メガネと誤解されやすいので。。。

絞っていくと、その効果が薄れていくので、明るいF値に関係しているようですが。メカニズムの解明が待たれます(笑)。

 

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タマアジサイ

 

 

次は、左からボタン。大株を表現しようと、いくつかの花にピントをあわせるため、多少絞っているかもしれません。

真ん中と右は、ラン。背景はほとんど溶けています。

 

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左は、フレアとゴーストの例。指輪のように見えますね。

右は、ダブルピントフォトの例。オカメという桜、背景と手前の両方にピントが合っています。

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以下の4点はダブルピントフォトの例。いずれも、背景と手前の両方にピントが合っています。

 

上段 左:サンシュユ    右:ヤマアジサイ

下段 左:クリスマスローズ 右:スカシユリ・ロリーポップ

 

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