今回は、過焦点距離を使った撮影例です。
さてさて、計算した通りの結果が得られるのでしょうか。
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撮影条件
レンズの選択
30mmのレンズ( Sigma 30mm F1.4 DC HSM)を使いました。
本来APS-C用のレンズで、4隅に多少ケラレはありますが、フルサイズでも意外と使えます。
フルサイズ用のレンズを使いたかったのですが、私が持っている広角はオールドレンズが多く、ピントが甘くなったりします。
カメラ:sony α7RⅡ (フルサイズ)
レンズ: Sigma 30mm F1.4 DC HSM
マウントアダプター:Sigma MC-11
焦点距離:30 mm
絞り:F8
備考:三脚とリモコンシャッターを使用。
ピントはオートフォーカスで合わせています。F8に絞るとマニュアルだと、ピント合わせが難しいですね。3mと3.75mの違いとか。カメラのピーキング機能(ピントの合う部分の輪郭が光って強調される)では、広い範囲が光ってしまいます。
現像
ライトルーム(Lightroom Classic Ver. 9.1)で読み込み後、無処理で書き出しました。 サイズは、2048☓1365ピクセルです。
APS-C用のレンズなので周囲にケラレが出ていますが、フルサイズでのボケの判断になるので、トリミングはしていません。
過焦点距離の確認(30mm、F8)
30mmのレンズでF8での場合、許容錯乱円を30μとすると、過焦点距離は3.75mとなります。
A:ピント位置=3m
3mの距離にいる人物にピントを合わせた場合、ピントが合っているように見える範囲は、1.7mから15.0mです。
B:ピント位置=3.75m (過焦点距離)
図の下のように、過焦点距離(3.75m)の位置にピントを合わせた場合、半分の1.9mから無限遠までピントが合っているように見えます。
C:ピント位置= 無限遠
無限遠にピントを合わせると、被写界近点は過焦点距離の3.75mになり、過焦点距離から無限遠までピントが合って見えるということになります。
撮影例 1
撮影例
北アルプスを望むたんぼ道です。距離を書いた板を並べています。
結果
A:ピント位置=3m
B:ピント位置=3.75m (過焦点距離)
C:ピント位置= 無限遠
下の撮影例からわかるように、一見して、A~Cの違いはそれほどわかりませんね。
クリックして拡大すると、遠景の北アルプスの鮮明さは、A≦B<C とCが一番鮮明です。
この例では、過焦点距離にピントを合わせるより、Cのように無限遠にピントを合わせ、過焦点距離の近くに前景を置くのがいいでしょう。山々をはっきりさせるのがポイントですね。
A:ピント位置= 3m
3.0mと書いた板に合わせています。
被写界近点の1.7mから被写界遠点の15.0mまでピントが合ってみえることになります。
しかし、拡大すると、15mと書いた板やその位置に立てたポールはややボケて見えます。
B:ピント位置= 3.75m (過焦点距離)
3.75mと書いた板に合わせています。
理論的には、1.9mから無限遠までピントが合って見えるはずです。
しかし、拡大すると、15mと書いた板やその位置に立てたポール、遠景の北アルプスはややボケて見えます。北アルプスの鮮明さは、Aよりはややいい程度です。
一方、1.7mと書いた板などの前景はAと大差ありません。
C:ピント位置= 無限遠
背景の北アルプスにピントを合わせています。
被写界近点は過焦点距離に近づき、手前の3.75mの板にもピントが合って見えることになります。
遠景の北アルプスは一番鮮明です。
撮影例 2
海王丸パークでの撮影です。ここは地面のブロックが20cm単位だったりして、距離が測定しやすいですね。
結果
A:ピント位置=3m
B:ピント位置=3.75m (過焦点距離)
C:ピント位置= 無限遠
下の撮影例からわかるように、A~Cの違いはそれほどわかりませんね。
この例でも、過焦点距離にピントを合わせるより、無限遠にピントを合わせ、山々をはっきりさせたほうがいいですね。
一方、撮影例(拡大)では、AとCでは、Bに比べて、背景の船のボートや山々は少しボケています。トリミングして拡大するということは、許容錯乱円は想定した30μより小さくしていることになります。
撮影例
A:ピント位置= 3m
ハートのモニュメント(3m)に合わせています。被写界近点の1.7mから被写界遠点の15.0mまでピントが合ってみえることになります。
背景の船や山々は、無限遠にピントを合わせた場合と比べるとややボケています。
B:ピント位置= 3.75m (過焦点距離)
ハートのモニュメント(3.75m)に合わせています。1.9mから無限遠までピントが合って見えるはずです。しかし、無限遠のピントは上のAと大差ありませんね。
C:ピント位置= 無限遠
背景の北アルプスにピントを合わせています。
被写界近点は過焦点距離に近づき、手前のハートのモニュメント(距離3.75m)にもピントが合って見えることになります。「恋人の聖地」の文字も読めますね。
撮影例(拡大)
上の写真をトリミングした拡大してみました。
A:ピント位置:3m
船のボートや山々は少しボケています。Bの過焦点距離との違いがないように見えます。
B:ピント位置:3.75m (過焦点距離)
船のボートや山々は少しボケています。
C:ピント位置:∞
船のボートや山々ははっきりしています。手前の舵はややボケています。
まとめ
今回の撮影条件では、過焦点距離にピントを合わせた場合の効果がほとんど見られませんでした。遠景のピントが甘い感じですね。
前景のピントを重視する場合は、過焦点距離を使うより、例Aのように前景そのものにピントを合わせたほうが良さそうです。
一方、無限遠のピントを重視する場合は、今回の例Cのように、無限遠にピントを合わせ、過焦点距離の近くに前景を置くのがいいでしょう。
あとがき
現像段階で拡大すると、許容錯乱円が小さくなり、ボケの判断がシビアになり、違いがわかりやすいのですが、ブログにアップする程度では違いがわかりにくいですね。
殺風景な板を使うより、美人モデルを使ったほうがわかりやすかったかもしれませんが(笑)。