秋になってきて、平野部からも剱岳から朝日が登るようになってきました。いわゆるダイヤモンド剱のシーズンですね。
今回は、日時と場所から、山の稜線から太陽が登る位置を推定する方法の紹介です。
例として、剱岳から朝日が登り、ダイヤモンド剱が見える場所と日時を探してみます。
最初は、雨晴海岸と場所を指定し、ダイヤモンド剱が見える日時を探す方法です。実際に撮影してみました。
次は、月日を指定し、普段剱岳が見える所で、ダイヤモンド剱が見える位置を探す方法です。
スパコンによる天気予報
最初に天気予報から。位置と時間がわかっても晴れていないと、朝日は見られませんね。スーパーコンピューターによる天気予報サイト、SCWで雲の動きを確かめておきましょう。
剱岳の場合、特に背後に多少の雲があったほうが、ダイナミックに焼けたりします。
太陽の出る位置を確かめる
日の出の位置の確認には以下のサイトがあります。
ただし、示されるのは水平線か地平線での位置と時間です。なので、海上から登る太陽の位置決めには有効です。
しかし、標高2999mもある剱岳の場合、日の出時間は遅れますし、また、太陽は斜め右上に登ってくるので、その位置も地平線の位置からはずいぶん右へずれた位置となります。
そこで、標高を考慮した日の出時間と位置の確認が必要となります。
カシミール3Dの利用
今回、フリーでも使えるカシミール3Dのカシバードという機能を利用します。
データとして、国土地理院の標高データを使い、カシバードという機能で、撮影場所から見える太陽の位置と時間を表示するのです。
1)カシミールダウンロード
以下のサイトからダウンロードできます。有料版もありますが、無料のカシミール3Dのフリー基本セットを使用しました。
2)プラグインと標高データのセット
カシバードで3D機能(展望図、鳥瞰図、断面図など)を利用するため、標高データを入手し、セットします。
上のカシミールダウンロードサイトにある「使える地図一覧」から、無料の「基盤地図情報(標高)」をクリックし、記載に従って、プラグインと地図データをセットします。
備考
1)基盤地図情報の入手には、国土地理院への利用者登録が必要です。新規登録は無料です。
2)選択した地図データを圧縮zipファイルでダウンロードし、XMLファイルに展開し、カシミール用にデータ変換(xemファイル)します。多くの地図を選ぶと、ファイル数が多くなり、手間がかかります。
例えば、5mメッシュ(5A~5C)で、543775を選択すると、8481KBのzipファイルがダウンロードされるのですが、クリックすると、100個ものXMLファイルができます。合計ファイルサイズは、8.28MBです。データ変換で1つのxemファイルになります。サイズは4996KBです。
3)セットした地図は、カシミール用に変換したxemファイルの番号でわかります。
4)未入手の地図データがあると、カシミールでは水色無地画面になります。必要なら、追加してダウンロードします。カシミールで山の頂点が表示されている場合は、基盤地図情報の画面で検索し、必要なメッシュ番号を選択します。データ変換時に、 「すでに変換済みの地形データは無視する」のチェックを はずします。
カシバードの利用
カシバードは地図を3Dで見ることができる機能です。
このカシバードを利用して、日時指定から、太陽の昇る位置と時間を推定し、ダイヤモンド剱になりそうな撮影位置を決めます。
下記の「日時を指定して場所を求める場合(近傍のとき)」を参考にしました。
1)Google Map
ダイヤモンド剱を見たい場所を探し、希望の場所で右クリックします。
一番上に表示された緯度、経度をクリックし、クリッボードにコピーします。
2)カシミール
カシミールを立ち上げて、検索窓で、1)でコピーした緯度経度を貼り付けます。
マップに「+ここです」と表示されます。
その位置で右クリック→[カシバード起動]でカシバードを起動します。
3) カシバード起動
目標を「剱岳」にセット
新規の場合、カシバードの[目標]ボタンを押します。
「目標を固定する」にチェックをつけます。
検索に「剱岳」を入れて[検索]を押します。「剱岳」が下のリストに出るので、これを選択して、[OK]を押します。
対地高度
目の高さの1~2m位にします。対地高度が合っていないと、時間や場所にズレが出ます。
レンズを選ぶ
カメラ各種設定で、レンズのマークのボタンを押します。
レンズのリストが出たら、適切な長さのレンズを選び、[OK]を押します。
最初は広角(28mmとか)で大体の位置を探し、その後は望遠(200mm~)で拡大します。
月日を設定する
カシバードの「太陽/月」のボタンを押してください。
求めたい月日を決めます。
[日の出詳細]を選択します。
[輪郭のみ描く]をチェックし、[軌跡を描いたままOK]を押します。
撮影する
剱岳がが視界に入ることを確認します。
太陽が表示されない場合、日の出の位置が大きくずれている可能性があります。レンズを広角にして再度試してください。
太陽が希望の位置に出ない場合、1)のGoogle Mapでの位置の入力から再度試してください。
カシミールで移動する方法もあるのですが、Google Mapの地図のほうが実際の撮影場所としてわかりやすいですね。
場所指定:ダイヤモンド剣になりそうな日時を決める
最初に、雨晴海岸で、女岩の上に剱岳の頂上が来る場所を指定し、ダイヤモンド剱が見られる日時を探します。
位置は、下のGoogle Mapの赤い矢印の位置で、緯度、経度=36.81638078596177, 137.03943090965572 とします。
その緯度経度をカシミールの検索窓にコピーし、「+ここです」の位置で右クリックし、「カシバード起動」をクリックします。
次の条件に設定し、「撮影」し、剱岳などを表示します。
対地高度:1m
レンズ焦点距離:300mm
次に、「太陽/月」をクリックし、
時間間隔:太陽が山の稜線を通過するのがわかりやすい時間間隔に設定します。
カレンダー:カレンダーを操作して、太陽が剱岳の頂上を通過する日を探します。
2021年は、11/7になりました。
下は、カシバードで表示された11/7の日の出の位置と時間です。2分おきの太陽の輪郭を示しています。
女岩の位置も示されています。6時38分すぎに剱岳の山頂を通過することがわかります。
太陽は45°近い角度で登ってきており、地平線の位置からはずいぶん右なのがわかりますね。
実際の撮影
実際に、Google Mapで示した雨晴海岸の位置で撮影してみました。
なお、表示した時間は、補正した時間です。カメラ内時計で表示される撮影時間を、電波時計を撮影して補正(-28秒)しました。カメラ内時計も電波時計になればいいのですが。。
11月7日6時38分15秒。
長次郎ノ頭の右にある窓(くぼみ)から太陽が顔を出しました。
11月7日6時38分19秒。
日の出の瞬間。澄んだ空気で太陽光が緑色に輝く、グリーンフラッシュですね。
ダイヤモンド・ティアラ
6時38分23秒。3つの大きめな太陽と小さなかけらがいくつか。ダイヤモンド・ティアラです。
6時38分24秒。3つに分割した太陽の大きさはほぼ均等に。
結果は・・
ほぼ予想どおりでしたね。厳密に言えば、予想よりやや右の位置からの日の出でしょう。
なお、次にこの位置から同じようなシーンが見られるのは、2022年の2月4日、7時8分の予想です。
このあたり、ブログでも紹介しています。
月日指定:ダイヤモンド剱が見える場所を探す
下の地図は、普段剱岳が見える場所で、ダイヤモンド剱がみられるだいたいの月日のラインです。簡略化して直線で示しています(下の注、参照)。2021年秋と2022年春の日時を示しています。
9/12と4/1のラインの位置から次第に北上します。
10/16と2/26のラインは呉羽山の展望台からのラインです。
冬至の12/22に、滑川のほたるいかミュージアムあたりが北限です。
冬至で折り返し、春になるに従って南下します。
注:以下では、上で示したそれぞれのポイントで見られる月日を示しています。ただし、同じ直線上にある途中の地点で同じ日に見られるわけではありません。地球は丸いので、実際はやや上に膨らんだ曲線になります。
月日指定:ダイヤモンド剱になる場所を探す
晴れそうな日に、ダイヤモンド剱になる場所を探します。
上のマップを参考に、Google Mapで予想した位置で右クリックし、その緯度経度をカシミールの検索窓にコピーし、「+ここです」の位置で右クリックし、「カシバード起動」をクリックします。
後は、雨晴海岸の場合と同様にして、ダイヤモンド剱になるかどうか、その時間を確認します。
太陽の位置が剱岳の左にずれている場合は、Google Mapの予想位置を南へと移動し、再度カシバードで確認します。太陽の移動方向とMapの移動方向は同じです。