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なぜ焦点距離に比例する?:レンズのF値(1)

開放F値の小さいレンズは、暗いところでも撮れるのと、ボケが美しいので、憧れです。値段もそれなりに高くなりますが(笑)。

 

ところで、このF値、レンズの焦点距離に比例するのはなぜでしょう。同じ口径(有効口径)なら、焦点距離が長いほど、F値の大きい暗いレンズになるのです。

そのあたり、定量的に調べてみました。

 

 
F値の定義:JISで定義されています
広角レンズのF値を小さくしにくい理由:焦点距離は短いのですが
まとめ:F = 1/265?

 

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小さくしにくい広角のF値:レンズのF値(2)

 

F値の定義

F値は、レンズの明るさに関係する指標です。日本産業規格(JIS B 7095-1997)で定義されています。なお、JISでは、Fナンバとされています。国際基準である ISO 517の「 f-number」の訳ですね。

 

F値:レンズの焦点距離と有効口径との比

 

  \displaystyle F値 = \frac{ 焦点距離 }{ 有効口径 }

 

  焦点距離と有効口径の単位は mm です。

 

・開放F値はレンズの固有値ですが、F値は絞りを絞ることでも変化します。

・マクロ撮影の場合、公表F値は実効F値へとその値が変わります。そのあたりは、焦点距離やF値が変わる:マクロの不思議で紹介しています。

・F値はレンズの透過率を100%とした場合の値です。レンズの透過率も考慮して明るさを表したのがT値です。

・焦点距離は「f」と小文字で、F値と区別します。

・なお、2019年7月1日から、JISの名称は、「日本工業規格」から「日本産業規格」に変更されました。

 

レンズに書かれているのは口径比

写真は、ニコンの AF-S NIKKOR 50mm f/1.2s  です。

ここに書かれている「1:1.2」は口径比です。焦点距離が有効口径の何倍になるのかを示しています。口径比 → 有効口径:焦点距離=1:焦点距離/有効口径=1:F値、ですね。

 

JISでは、F値の逆数を口径比として定義していますが、ISO 517では、口径比を定義してからF値を定義しています。

写真の例では、口径比は、 1/1.2 = 0.83・・となります。分数または小数点がつく数字になるため、その逆数であるF値が使われます。

 

f:id:Paradisia:20190910104056j:plain

 撮影のため、フードなどを外ましたが、マウントアダプターはつけたままでした(笑)。

 

 

F値に焦点距離が関係する理由

有効口径が明るさ(F値)に関係するのはなんとなくわかりますが、焦点距離が関係するのはなぜでしょう。

それは、以下のように説明できます。

 

1)レンズに入射する光量は、レンズの有効面積に比例し、レンズの有効面積は有効口径の2乗に比例します(下の式の分子)。面積 =(長さ)2  ですからね。

レンズの有効口径が大きいほうが、たくさんの光を取り込めます。大口径レンズが明るい理由ですね。

 

2)一方、イメージセンサーに映り込む被写体の面積(光量)は、焦点距離の2乗に反比例します(下の式の分母)。

ここで焦点距離が登場しました。下の方で図解して説明します。

 

3)したがって、イメージセンサーに写る像の全体の光量は、有効口径の2乗に比例し、焦点距離の2乗に反比例します。

つまり、光量は、F値の2乗に反比例することになります。

 

  \displaystyle 像の光量 ∝ \frac{ (有効口径)^2 }{ (焦点距離)^2 }   = \frac{ 1}{ (F値)^2 } 

 

被写体の面積(光量)は、焦点距離の2乗に反比例

上の2)について、図解してみます。

 

図で、取り込む被写体の面積(光量)は、A1B1の線の長さの2乗になります。また、比例関係より、a:A1B1= f:A2B2であることから、 

 

取り込む被写体の面積(光量)= \displaystyle {(A_1B_1)^2}

 

             = \displaystyle \frac{(a☓ A_2B_2)^2}{(f )^2 }


             ∝ \displaystyle \frac{1}{(f)^2}

 

となり、被写体まで距離(a)とイメージセンサーの大きさ(A2B2)が一定の場合、取り込む被写体の面積(光量)は、焦点距離の2乗に反比例することがわかります。

また、焦点距離が大きくなると、画角(Θ)は小さくなります。

f:id:Paradisia:20190909174115j:plain

 

広角レンズのF値を小さくしにくい理由

F値は焦点距離を有効口径で割った値であることから、焦点距離が長いほど、レンズの口径が大きくなり、開放F値の小さい明るいレンズを作ることは難しく(高価に)なります。例えば、200mmでF2のレンズを作る場合は、有効口径は100mmになります。

 

一方、焦点距離の短いレンズの場合、比較的簡単そうです。例えば、焦点距離が20mmの場合、有効口径を20mmにすれば、F1.0になります。

しかしながら、そんなレンズはなく、広角レンズで開放F値の小さなレンズは高価です。それはなぜでしょうか。

 

そのあたりは次回です。

 

まとめ

・F値は「焦点距離/有効口径」と定義される。

・F値はレンズの明るさに関係する。

・焦点距離が関係するのは、被写体から入る光量が焦点距離により変わるからである。

・F値は距離の比なので、その2乗が光量(面積)比となり、明るさの指標としての意味を持つ。

 

F値、距離を距離で割っているので、単位のない無次元量です。質量や距離など、実際に存在する物理量ではなくて、人為的なパラメーターですね。

であれば、F値の2乗の逆数(口径比の2乗)を、F値の定義としておけば、光量比そのものとなり、わかりやすかったのかもしれません。
そうなると、F16は、F1/256 = 0.0039・・になってしまい、小さなレンズに絞りとしては表示しにくいでしょうね(笑)。