今回は、現像ソフト、Lightroom のプリセットの話です。
機能が多いのはありがたいのですが、いろいろありすぎて面倒な現像処理の調整が、マウスオーバーですぐに反映され、クリック一発、一瞬で適応できるのがいいですね。
組写真など、多くの写真でも同じ効果が簡単に適用できてしまいます。
今回、デジタルカメラマガジン(2019年10月号と2020年2月号)で紹介されていたプリセットを例に紹介します。
人気写真家のプリセットということで、それぞれには、もっともらしい名前がついています(笑)。
しかし、それらは紹介された写真で最適になる条件で、すべての写真で必ずしも同じ効果が得られるわけではありません。
むしろ、雑誌の記事で紹介されているように、どこを変えればどうなるか、Lightroom の多彩な機能を理解するのに役立ちます。
関連
なお、今回の使用したOSやLightroomは以下のとおりです。
OS:Windows 10
Lightroom Classic:オンラインコード版(Ver. 9.2)
Adobe Creative Cloud フォトプラン
(Photoshop+Lightroom) with 1TB
アドビの「Photoshop」と「Lightroom」が使えるオンラインコード版(定額制サービス)です。詳しくは、「雲が消えた:ライトルームのかすみ除去」を。そこでも紹介していますが、アドベには、無料体験版や、私が利用しているフォトプラン(「Photoshop」+「Lightroom」+ クラウド容量20GBで、月額 980円)などががあります。
そもそもプリセットとは
ここでいうプリセット(presets)とは、現像ソフト・Lightroomの現像プリセットのことで、以下の主な現像項目の設定値を保存したファイルのことです。
現像項目
基本補正:色温度や露光量、コントラストやハライト・シャドウなど。
私の場合、たいていはここだけしか触りません(笑)。
トーンカーブ:4つの領域の明るさを基本補正より細かく調整できます。光沢がないマットにしたり、S字カーブとしコントラストを強くしたりすることもできます。
HSL/カラー:色別に、色相、彩度、輝度が調整できます。
明暗別色補正:明るい部分と暗い部分別に、色相と彩度を調整します。
ディテール:シャープとノイズ軽減の調整。
レンズ補正:色収差など。
効果:周辺光量や粒子の調整。
なお、Lightroomには、基本的なプリセットがあらかじめ準備されています。現像モードの左カラム「プリセット」を展開すると、下のような一覧が示されます。
既存のプリセット
オリジナルプリセットの作成
既存のプリセットを参考にするなどして、オリジナルのプリセットを作成することもできます。
独特のプリセットを作り、個性を出すのもいいですね。
プリセットの作成では、反映したい項目のみを選択できます。選択以外の項目はオリジナルの設定がそのまま引き継がれます。
1)現像モードで、パラメータを調整します。
2)現像モードの左カラムより「プリセット」の「+」をクリックし、「プリセットを作成」を選びます。
3)プリセット名を入力し、グループ名を選択するか新規作成し、プリセットしたい項目をチェックまたはチェックを外し、「作成」をクリックします。
設定項目は1)で調整した項目のみ選択します。処理バージョンにはチェックを入れておきます。
5)プリセットメニューに、新たに作成したプリセットが表示されます。
プリセットの非表示
プリセットが多くなると選択時に煩雑になります。特定のフォルダを非表示にできます。
1)現像モードの左カラムより「プリセット」の「+」をクリックし、「プリセットの管理」を選びます。
2)非表示にしたいプリセットフォルダのチェックをはずし、保存します。
プリセットデータの保存場所
保存場所の確認:Windows10の場合
1)メニューバーの編集/環境設定/プリセットで、中央にある「Lightroomの現像プリセットを表示」をクリック。
2)「CameraRaw」フォルダが開かれ、その中の「Settings」が保存場所です。プリセットデータが確認できます。
このファイルはPhotoshopと共用しています。バックアップする場合は、このフォルダーになります。
無料のプリセットのダウンロード
フリーのプリセット
ネットには、多くのフリーのプリセットが公開されています。
海外のサイトが多いのですが、たいていはメールアドレスと氏名の入力が必要です。これは、会員登録ではありません。メールで、ダウンロードアドレスが送られてきます。
デジタルカメラマガジン
日本語で解説されたフリーのプリセットとして、「デジタルカメラマガジン」2020年2月号(1/20発売)では、人気写真家のプリセットを特集しています。
写真を例に詳細に紹介されており、普段あまり使わないトーンカーブやディテール、効果なども変更されるので、レタッチの参考になります。
紹介されているプリセットは無料でダウンロードできます。あわせて、第1弾(2019年10月号)で紹介されたプリセットも4月20日までダウンロードできます。詳しくは、デジカメWatch をごらんください。
ただし、ダウンロードには、パスワード(それぞれの雑誌にある記事のタイトル)が必要です。私は、Amazon のキンドル読み放題(Kindle Unlimited)で読みました(笑)。
プリセットのダウンロードと設定
プリセットをダウンロードして使用する方法です。Windows10の場合です。
上で紹介した「デジタルカメラマガジン(2020年2月号)」を例にしています。
1)プリセットをダウンロードし、ダウンロードされた「DCM2020-02.zip」を右クリックして「すべて展開」を選択します。「***.xmp」というファイルとして展開されます。
2)Lightroom を起動し、左のカラムにあるプリセットの「+」をクリック、「プリセットを読み込み」をクリックし、Ctrl+Aで先ほど展開したファイルを全て選択し読み込みます。
プリセットの読み込み
3)プリセットに「DCM2020-02」フォルダと各ファイルが追加されるので、そのプリセット名にマウスをのせるだけで、写真に反映されます。クリックすると設定が変化します。
4)プリセット使用前の状態に戻すには、右下にある「前の状態」か「初期化」をクリックします。
比較するためにも、画面の仮想コピーを作っておいたほうがいいでしょう。下のバーにある画面で右クリックして、「仮想コピーを作成」をクリックします。コピーは複数作成できます。
なお、Lightroomは調整内容だけを保存するシステムなので、仮想コピーを作っても画像ファイル(容量)が増えるわけではありません。
仮想コピーの作成:オリジナルの右横に同じ画像が作成されます。
プリセットの利用例
デジタルマガジンのプリセットの利用例を紹介します。
今回は、マウスオーバーで、面白い写真になったものを選んでいます。
よって、必ずしもプリセット本来の意図とは違った感じになっている写真が多いですね。
プリセットの紹介なので、できるだけ追加調整せずに使用しました。
注:投稿した時に比べ、画像を一部追加・変更しています。
以下のプリセットは、デジタルマガジン2019年10月号から。
エキナセア
枯れかかったような乱れた花です。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。明るめに、基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
フレッシュ グリーン
春の新緑をより鮮やかにするというプリセット、フレッシュ グリーン(FRESH_GREEN)を使った例です。
私が変更した基本補正(色温度や露光量など)は、このプリセットの設定値に変更されます。また、トーンカーブ、HSL/カラー(オレンジがマイナス)、ディテール(シャープやノイズ軽減)や効果が修正されています。
色温度を4410Kに下げる設定ですが、元が4100Kと低いので今回は逆に上って、暖色系になっています。
サイバーブルーナイト
工場夜景などをクールにするというプリセット(CYBER_BLUE_NIGHT)です。
基本補正、トーンカーブ、HSL/カラー、ディテールや効果が修正されています。特に明瞭度とコントラストの調整が大胆ですね。
明瞭度は+100とし輪郭をはっきりさせる一方、コントラストは-100とし透明感を出しています。
周辺部の光量が落ちて、花がスポットライトをあびたように浮かびあがっています。
ラン(ファレノプシス)
紅色が美しいランです。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。艶やかに、基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
サイバーブルーナイト
先に紹介した工場夜景などをクールにするというプリセット(CYBER_BLUE_NIGHT)です。
ブルー系の花が幻想的で、花びらの模様が強調されています。
上野動物園で
ゾウの前で。女性の顔が影になっています。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。顔を明るめに、基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
ナチュラル ベビー スキン
自然光を生かして優しく女性を活かすというプリセット(NATURAL_BABY_SKIN)です。
基本補正、トーンカーブ、HSL/カラー、明暗別色補正、ディテールや効果が修正されています。テクスチャや明瞭度が下がっています。
女性やベビーの肌よりも、背景が白くなってしまいました。白くなり過ぎなので、色温度、感光量、ハイライトを修正しています。影になっていた顔は明るくなりました。
ラン(ファレノプシス)
蝶が舞っているような花です。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。花が目立つように、基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
アナザー ディメンション
大胆な色相の変化というプリセット(ANOTHER_DIMENSION)です。
基本補正(色温度など)、トーンカーブ、HSL/カラー、レンズ補正や効果が修正されています。
効果の周辺光量補正で周辺減光が生じ、花の存在感が強調されます。HSL/カラーの緑の色相や彩度を減量しているのですが、この写真ではわかりません。
河津桜
例年より早く咲いた今年の河津桜です。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。全体に明るめに、基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
ドリーミー ブロッサム
ハイキーで花を際立たせるというプリセット(DREAMY_BLOSSAM)です。
基本補正、トーンカーブ、HSL/カラー、明暗別色補正、ディテール、レンズ補正や効果が修正されています。
明暗別色補正では、ハイライトやシャドウの色相や彩度を調整し、寒色系にすることで花が目立つようにしています。
このプリセットはハイキーにするので、暗めに撮っておかないと白飛びになってしまいます。
ややうるさすぎる背景のボケをめだたなくすることて、センターに垂れ下がる花がより引き立ってきました。
以下のプリセットは、デジタルマガジン2020年2月号から。
フヨウの花
和紙のような質感の花。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
ノスタルジック シネマ
ネガフィルムのようなトーンを出すというプリセット、ノスタルジック シネマ(NOSTALGIC_CINEMA)。
基本補正、トーンカーブ、HSL/カラーが修正されています。
色温度やHSL/カラーを暖色系にしたせいか、真ん中の紅色、虫を集めるマーク(蜜標)まわりが強調されました。また、下にある花びらのボケが強調されています。
フォンタナ ビビッド
鮮やかなフラメンコ・フォンタナをイメージしたというプリセット(FONTANA_VIVID)。
基本補正、トーンカーブ、HSL/カラー、明暗別色補正、レンズ補正(色収差を除去)、効果が修正されています。
色温度が下がり、花びらはブルーになり、別の花のようです。紫外線を感じる虫たちには、このように見えているのかもしれません。
ブラックバッカラ
ビロードのような質感で、黒バラとして有名なバラです。実際の色は黒めの赤ですね。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。より華やかに、基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
ドライ ブリーチ バイパス
フィルム現像の「銀残し(Bleach bypass)」をシミュレーションしたというプリセット(DRY_BLEACH_BYPASS)。
基本補正、トーンカーブ、明暗別色補正、効果が修正されています。彩度を下げ、基本補正のコントラストはあえて変化させず、トーンカーブのS字調整(左端を上げ全体を光沢を抑えたマットな感じに、真ん中あたりの暗部を下げるなど)でコントラストを高めにしています。
設定値よりシャドウを下げたので、より黒バラらしくなりました。
古城公園の紅葉
大きく枝を広げる高岡古城公園の紅葉です。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。色合いを変えた、基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
デリケート スノウ
透明感のある冷たさを演出するというプリセット、デリケート スノウ(DELICATE_SNOW)。基本補正、明暗別色補正、ディレール(シャープ)、効果が修正されています。
全体に青みが加わり、より渋いシーンになりました。
水面に写った冬の樹木
青空が水面に写った冬景色。
左は、未現像の映像です。
右は、私の現像例。空の青を強調した基本補正のみの変更です。
現像前と私の現像例(右)
イルミネート フィクション
夜景を彩るプリセット、イルミネート フィクション(ILLUMINATED_FICTION)です。
基本補正、トーンカーブ、レンズ補正(色収差を除去)、効果が修正されています。トーンカーブを調整して、明るい部分を美しく、効果で周辺光量の適用量を落として焼き込み効果をつけています。
青が鮮やかすぎたので、追加で色温度とハイライト、白レベルを調整しています。月明かりがさしているようなシーンになりました。