たくさんの写真を撮っていながら、わかっているようでわかっていないのが、「露出」ですね。
絞りやピントを調整するリングがあっても、「露出」そのものを調整するリングがないのも、わかりにくい理由のひとつでしょう。
さて、クイズです。写真で言う「露出」とは次のどれでしょう。
1)カメラが自動的に決めてくれる明るさ
2)「絞り」で明るさを調節すること
3)光をイメージセンサーにさらすこと
4)撮影時に取り込まれる光の量(明るさ)のこと
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そもそも露出とは
露出(exposure)とは、「露出させる」という場合のように、レンズからの光をイメージセンサーにさらすことです。
また、「適正露出」などのように、撮影時に取り込まれる光の量(明るさ)をさす場合もあります。なので、答えは3)と4)ですね。
これは、下の図に示したように、フィルター、レンズのF値、絞り、シャッタースピードによって決まります。デジタルカメラでは、イメージセンサーの感度も関与します。
つまり、「露出」そのものを調整するリングはなくて、それぞれの設定値から、カメラが自動的に適正露出(光の量)を決めてくれるわけです。
露出の流れ
露出と光量の変化は以下のようになります。
1)フイルター NDフィルターなどによって、光の量を弱めます。もちろん、使わない場合もあります。
2)レンズのF値によって、入ってくる光の量が調整されます。F値=焦点距離/口径なので、レンズ口径と焦点距離(画角)が関係します。
3)絞りのF値によって、入ってくる光の量が調整されます。
4)カメラのシャッタースピードによって、光にさらされる時間が決まります。
5)カメラのイメージセンサーの感度調整により、電気信号を増幅します。
以上の組み合わせで、残りの要因をカメラが自動的に調整して適正露出とし、最終的に光がデジタルデータとして記録されます。
例えば、ISO感度固定で、絞り優先モードで撮影した場合、シャッタースピードを調整して適正露出にされます。
もちろん、マニュアルで設定することもできます。また、ハイキー(露出オーバー気味)・ローキー(露出アンダー気味)のように、意図的に露出補正することもできます。
暗い場合の対応は一つだけ
簡単に言うと、上の1)~4)は、光量は減らす仕組みで、5)は光を感じやすくする(みかけ上、光量を増やす)仕組みです。
つまり、適正露出とする場合、明るい時は、いくつかの方法で調整できるのですが、暗い時は、ISO感度を上げるしか無いのです。
カメラで調整できるのは3箇所です。ちなみに、人の目には虹彩というレンズで言う絞りがあって、イメージセンサーに相当する網膜に届く光の量を調整しています。
露出に関する用語
以下にそれぞれの言葉の意味について説明します。
NDフィルター(Neutral Density filter)
薄膜による光の吸収や反射で、波長に関係なく均等に光の透過率を減らすフィルターです。例えば、ND2なら光量を2分の1に減少させます。
露出値(Exposure Value)
露出の度合いを表す数値で、その単位はEVで表記されます。カメラが適正と判断した露出値を基準とし、EVの-1とは、届く光が半分(絞り値が 倍)になるか、シャッタースピードが2倍に速くなる場合です。
例えば、α7RIIでは、露出値は1/3又は1/2ステップで、±5EVの範囲で調整可能です。また、ブラケット撮影で、露出値を変えて複数枚(最大9枚)の写真を撮り、HDR合成することも可能です。
「段」について
なお、1EVに相当する変化を、写真の世界では「段」と呼びます。光量は2倍(2分の1)変化します。
例えば、下の表のように、絞りで「1段絞る」とは、絞り値を 倍(約1.4倍)とすることです。n段絞ると、絞り値は 倍となり、光量は となります。
また、シャッタースピードを「1段上げる」とは、シャッタースピードを2倍速く(露光時間は半分)することです。
さらに、NDフィルターの効果が「1段分」とは、1EV分の減光効果があることを意味します。NDフィルターの数字は、光量を何分の1に減らすかを示しています。例えば、ND2を使うと、光量は2分の1になります。
絞りだけが1段= 倍(約1.4倍)とややこしいのは、前に説明したように、F値の定義のため。F値は、焦点距離/口径と、長さの比で定義され、一方、入ってくる光量は面積に比例するので、F値の2乗に比例するという関係にあるのです。
絞り値 倍(約1.4倍)= 光量
白とびと黒つぶれ
強い光があたり露出オーバーとなり、明るい部分(ハイライト)が諧調情報を失って真っ白になることを白とびといいます。逆に、暗すぎて露出アンダーとなり、暗い部分(シャドー)が諧調を失って真っ黒になることを黒つぶれといいます。
ダイナミックレンジ
イメージセンサーで、白とびと黒つぶれが起こる限界の露出の幅の大きさをダイナミックレンジといいます。この幅が広いほど白とびや黒つぶれは起こりにくくなります。
なお、α7RIIなどには、逆光などで明暗差が大きいときに、撮影した画像の各領域を分析して、自然な階調表現に自動補正する「Dレンジオプティマイザー」機能があります。
ISO感度
ISO感度は、イメージセンサーにあたった光の電気信号を増幅する目安の値です。フィルム感度相当が基準となっています。ISO感度を2倍にすると電気信号は2倍になり、光の量が半分で適正露出になります。ただし、ノイズも増幅されるので、画面がざらつく場合があります。
私は、暗い時はISOはオートで、上限設定値は1600です。そのあたり、ISO AUTO低速限界とは:ISO 感度設定の話で紹介しています。
なお、α7Sシリーズのように、画素数を減らし1画素あたりの受光面積を広げることなどにより、ノイズを抑えながら最高ISO感度をあげたカメラもあります。
まとめ
露出とは、レンズからの光をイメージセンサーにさらすことでした。カメラ内では、絞りとシャッタースピード、ISO感度を設定すると、自動的に適正露出を決めてくれます。
しかし、明るい場合は、いくつかの方法で明るさを調整できるのですが、暗い場合は、ISO感度を上げるしか無いのです。
なお、RAWファイルで撮影し、現像する場合は、基本的に暗めに撮ったほうがいいですね。暗い場合は現像で明るくできますが、明るすぎる場合(白飛び)は修正できませんから。