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主点の位置は変えられる:レンズの基礎(2)

レンズの基本的な話、前回は、レンズは無限遠からの光を基準に設計されており、光が集まって像ができる焦点の位置にカメラのイメージセンサーがあると紹介しました。

そこででてきた疑問は以下のような点。今回は、そのあたりについての話です。

 

 広角レンズ:焦点距離が短く、一眼レフでミラーの可動用スペースをどうするのか

 望遠レンズ:焦点距離が長いと、レンズも長くならないのか

 

 
複数のレンズがある場合:主点の位置は変えられる
望遠系:主点は遠くへ
被写体が近い時:像はイメージセンサーからずれます

  

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複数のレンズがある場合

前回紹介したレンズの公式では、厚みのない1枚の凸レンズを想定していました。ただし、実際のレンズは複数のレンズ群から構成されているので、ややこしくなりそうです。

 

しかし、話はシンプルです。複数のレンズがある場合、最終的に屈折して焦点に集まる光の延長線と、無限遠からの平行な光との交点が、複数レンズ全体の主点となるのです。レンズが何枚あっても、最後の光の光路が決め手で、結局は一枚の凸レンズにまとめてしまうんです。

 

この場合、前後で非対象となるので、主点が前後に2つ存在します。区別する場合は、今までのカメラ側を後側主点(第二主点)、後側焦点といいます。

 

この場合、レンズの組み合わせ方によって、主点や焦点距離の位置を変えることができるのです。下の図では、一枚の凸レンズに凹レンズを一枚加えた場合を示しています。

 

凹レンズをを加えたことで、広角系ではイメージセンサー側に、望遠系ではイメージセンサーとは反対側に、それぞれ主点が移動します。この位置に、仮想的な一枚の凸レンズがあるイメージですね。その主点と焦点の距離が、焦点距離になります。

 

広角系:レトロフォーカスレンズ

凸レンズの前に凹レンズを置くことで、下の光路図で示したように、複合系レンズの主点は、イメージセンサー側に移動します。

 

レンズ群は、焦点距離よりも離れた位置となるので、バックフォーカス(レンズ後方からイメージセンサーまでの距離)が長くなり、一眼レフではミラーの可動用スペースを確保できます。

 

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逆望遠とかレトロフォーカスレンズと呼ばれています。「レトロ = 後ろ」、「フォーカス = 焦点」で、焦点の位置を後ろへ移動させたという意味です。現在では、一眼レフだけでなく、ミラーレスカメラでも、広角レンズはこのタイプです。

 

レンズ構成としては、前方に凹レンズ群、後方に凸レンズ群となりますが、実際のレンズで、必ずしも前玉が凹レンズというわけではありません。

 

下は、私の使っている広角レンズ、 Ai-S NIKKOR 35mm F1.4 です。レンズ構成は 

ニッコール千夜一夜物語をを参考にしています。

レンズ長、ニコンに記載の62mmはバヨネット(マウント)基準面からで、そこからレンズが少し出ており、レンズ後端までの実測は約69mmでした。前玉は凸レンズですね。

ニコン用レンズで、SONY のE-マウントには、マウントアダプターを介して装着します。イメージセンサーから35mm(焦点距離相当)離れた主点は、マウントアダプターの位置にあります。

 

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Ai-S NIKKOR 35mm F1.4

レトロフォーカスレンズでは、主点よりレンズ群は前方になるので、ミラースペースが確保できます。

 

望遠系

広角系とは逆に、凸レンズの後ろに凹レンズを置くことにより、主点はレンズの前方に移動します。なので、焦点距離よりもレンズの長さを短く、コンパクトにすることができます。

 

レンズ構成としては、前方に凸レンズ群、後方に凹レンズ群となります。凸レンズと凹レンズの距離を離すほど、主点の位置はイメージセンサーから遠ざかります。

 

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被写体が近い時

遠くのものを撮る時は焦点に像ができるのですが、近くの被写体を撮る時は、図で示すように、レンズで作られる像A'B'は、焦点の後ろにできます。なので、焦点の位置にあるイメージセンサーからは、ずれてしまいます。

これには、どう対応するのでしようか。そのあたりは次回に。

 

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最後に

今回のようなレンズ群では、非対称のレンズの組み合わせになります。なので、波長による屈折率の違いによって生じる色収差が問題となってきます。

 

特に広角系では、より広い範囲の光を集めるため、多くのレンズを使用して色収差などを少なくする工夫がされているのです。最近の広角レンズ、焦点距離が短い割には、長くて大きいレンズが増えているわけですね。