レンズを絵筆に、光を絵具に

写真やレンズの話をメインに紹介するブログ

レンズの公式:レンズの基礎(1)

今回から、レンズの基本的なことについての話です。

 

知っているようで、いろいろ調べてみると、意外に知らなかったことや疑問が出てきて、深みにはまりましたね。これがいわゆる"レンズ沼"なんでしょうか(笑)。

 

 

関連 

レンズの公式:レンズの基礎(1)

主点の位置は変えられる:レンズの基礎(2)

レンズを繰り出す:レンズの基礎(3)

レンズを逆にして超マクロ:レンズの基礎(4)

リバースで超マクロ撮影:レンズの基礎(5)

 

レンズの公式

最初に、レンズの焦点距離などの基本的な話を。中学理科や高校の物理に出てくるような話です。

 

シンプルに考えるため、カメラのレンズを厚みのない1枚の凸レンズと仮定します。この場合、被写体(AB)がイメージセンサーに写る様子は、下のような光路図となります。 

 

レンズを通る光の基本原則として、

 

1)無限遠にある点光源からくる平行光は、焦点を通ります。
2)レンズの中心(主点)を通る光は直進します。

 

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上の図はかなりデフォルメされています。実際はaに比べて、bやfはかなり小さくなります。

 

 

また、それぞれの用語は以下のようになります。

光軸(optical axis):レンズの中心を通り、レンズ面に垂直な直線。

主点(principal Point):レンズの光学的中心。

焦点(focus):光軸に平行な光線が入射したとき、通過後の光線を延長した直線が光軸と交わる点。焦点は、イメージセンサー側と被写体側の2箇所にあります。区別する場合は、それぞれ、後側(第二)焦点、前側(第一)焦点といいます。

焦点距離(focal distance):主点から焦点までの距離。

 

有効口径(effective aperture):無限遠にある点光源から入る平行光線からなる光線束の直径のことです。有効口径は、レンズの絞りを絞ることで調整することもできます。

画角(angle of view):カメラが写し込める範囲を角度で表した値。

 

図において、次のレンズの公式が成り立ちます。

 

\displaystyle \frac{1}{a} + \frac{1}{b} =\frac{1}{f}  

 

a:被写体からレンズまでの距離

b:レンズからイメージセンサーの距離

f:レンズの焦点距離 被写体が遠い時

 

レンズの公式は、レンズの性質というより、三角形の相似関係から数学的に証明される式ですね。なので、わりと使えます。

ただし、焦点距離やF値が変わる:マクロの不思議で紹介したように、焦点距離(表示焦点距離)は無限遠での値なので、マクロ撮影時などには、焦点距離(実効焦点距離)が変化するので注意が必要です。

 

 

イメージセンサーは焦点の位置に

上の表示焦点距離の話にもあるように、通常、レンズは、無限遠の被写体を撮影することを前提に設計されています。

無限大の距離にある被写体からやってくる光は光軸と平行になり、焦点の位置に像ができます。

 

上のレンズの公式において、a→∞ となり、よって、b = f となります。つまり、焦点の位置に像ができることがわかります。像の長さや面積は0となり、像は点となります。

そして、一般的なカメラは、無限遠からの光による像ができる焦点の位置にイメージセンサーがあります。どちらかというと、イメージセンサーの位置に焦点がくるように、レンズを設計しているんですね。

 

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太陽でセンサー焼け!?

ちょうど焦点の位置にイメージセンサーがあるので、太陽にピントを合わせると、虫メガネで光を集めて、物を焦がす状態になります。。。

オールドレンズを活かすミラーレスで紹介したように、一眼レフの場合、像をミラーで反射して直接見ているので、太陽を直接見てはいけないのは常識ですね。

 

一方、ミラーレスはEVF(電子ビューファインダー)なので問題ないかというと、そうでもなく、太陽の強い光に当てると、イメージセンサーに障害(センサー焼け)が生じる場合があるようです。

一眼レフでは、シャッターを切ったときだけイメージセンサーに光があたりますが、ミラーレスの場合、常にあたっている状態ですから注意が必要なのでしょう。

 

電源オフの場合でも、無限遠にピントを合わせたままキャップをしないで持ち歩いたりするのも問題との話もあります。これを防ぐため、SONYのレンズは電源オフでは絞りが最大に絞られるのかもしれませんね、

まあ、そんなに問題にはなっていないようですが、使わない時は、こまめにレンズキャップをしたほうが良さそうです。

 

 

虚 像(virtual image)

理科や物理では、虚像についても習いましたね。虫眼鏡(凸レンズ)の焦点の内側に被写体をおくと、被写体より大きい正立の虚像ができます。虚像自体は実際に光を出しているわけではないので、イメージセンサーに写すことはできません。下図のように眼で見たり、撮影したりすることはできます。

虚像といえば、私たちが毎日見ている鏡に写った像も、虚像ですね。

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ミラーの可動用スペースが足りない!?

それぞれのレンズの焦点がイメージセンサーの位置にあるとすると、以下の疑問が生じてきます。

 

広角レンズ:ミラーの可動用スペースをどうする

ミラーレスカメラの場合はいいのですが、一眼レフカメラでは、レンズとイメージセンサーの間に、ミラーの可動用スペースが必要になります。

焦点距離が短い広角レンズでは、レンズとイメージセンサー間の距離が短く、ミラーの可動用スペースがとれません。 どうしているのでしょうか。

 

望遠レンズ:レンズは長くならないのか

望遠レンズでは、焦点距離が長くなると、レンズも長くなりそうです。しかし、実際、超望遠レンズでも焦点距離ほどの長さはありません。それは、なぜなのでしょうか。

 

以上の説明は次回に。

 

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レンズの焦点がイメージセンサーの位置にあると、例えば、焦点距離が20mmの広角レンズの場合、2cmの間にミラースペースを収めなくてはいけません。また、1200mmの望遠レンズの長さは1.2mにもなります。

 

 

最後に

スマホやノートPCなどのカメラ、ずいぶん薄いので、焦点距離が短いレンズなことがわかります。それなりに美しく映るのはすごい技術です。

将来的には、昆虫の複眼のように、焦点距離や明るさの異なる多数の小さなレンズからの映像を合成して1枚の映像に仕上げる、複眼レンズなんてのもできそうですね。