以前、レンズだけでも使えないかと、長い間使わなくなっていたフィルムカメラを久しぶりに取り出してみたら、わ゛ーという感じ。。。
グリップあたりに白い粉がびっしりでした。。。中を開けたら、ミラーにも。。。カビですね。幸い、レンズは見た目的には無事でしたが。
これから暖かくなり、そして梅雨の季節になると、カビには注意が必要です。グリップだけでなく、ファインダーをのぞいた時など、ボディには皮脂や汗がつきますから。
ということで、今回は防湿庫の話です。使わなくなったら、せんべいか、のりの乾燥にでも、と思いましたが、今のところ、満員御礼です(笑)。
防湿庫に関する問題から
いきなり問題です。以下は、フォトマスター検定 、2級(第3回検定)の問題から。
次の文章を読んで、正しい記述を①~③の中から選べ。
「カメラやレンズなどをよりよい状態で保管するためには、防湿庫を使うのがよいとされているが、防湿庫の湿度はどの程度に維持されているか。最も適切なものを次の中から選べ。」
①カビの発生や増殖を防止するために、湿度は0%がよいとされており、防湿庫内の湿度は0%になるようになっているものが多い
②カビの発生や増殖を防止するために、湿度は15%以下であればよいとされており、防湿庫内の湿度は15%以下になるようになっているものが多い
③カメラやレンズにとって、過度の乾燥状態はよくないとされており、概ね30~50%程度になるようになっているものが多い
正解は最後に(笑)。
なぜレンズにカビがはえるのか
ネットには、レンズとカビについて、専門的に詳しく紹介したサイトはありませんでした。一般的な話としては、
空気中には多くのカビの胞子が浮遊しており、レンズ交換やズームなどで、カビの胞子がレンズやカメラ内に付着すると、温度が5℃~35℃前後で、表面水分と表面物質を栄養とし生育するのです。
少し詳しくは、
・「カビ」は俗称で、真菌類の集落(コロニー)のうち、食品などで生育し肉眼で見えるものをいいます。
・種類によって異なりますが、胞子の直径は2~10μです。α7RIIのイメージセンサーの画素ピッチ(4.5μ)と似てますね。ちなみに、PM2.5の大きさは2.5μです。
・室内の空気1m³中には、いつも数個から数千個のカビの胞子が浮遊しています。
・生育に必要なものは、温度、湿度、酸素、栄養です。
・種類によって、食品だけでなく、プラスチックや金属など、ほとんどの物質を栄養にすることができます。(ネットには、レンズのコーティングをエサにしているという話も)
・表面にチリや汚れなどがあるとカビの発育が促進されます。
・カビの発育には、80%以上の湿度が必要ですが、これは室内の湿度ではなくて、表面湿度(非常にわずかな水分)です。
・湿度が低いところでも生えるカビ(好乾性カビ)がいます。好乾性といっても、湿度65%以上を好みます。
したがって、カビを防ぐには、できるだけチリや汚れを取り除いて、湿度を下げて保管すればいいわけです。ただし、レンズやカメラによっては過度の乾燥状態は好ましくない場合もあるので、適度な湿度を保ってやることが必要になるわけです。
もちろん、適切な条件で保管されることを前提としているので、レンズの防カビコーティングが開発される予定は無いでしょうね(笑)。
オートクリーンドライ 防湿庫
で、私は、東洋リビングのオートクリーンドライ防湿庫を使っています。主な仕様などは以下の通り。梅雨になる前の、2015年5月に買いました。大きな箱が届きます。組み立てる必要はありません(笑)。
名称:東洋リビング オートクリーンドライ 防湿庫
型番: ED-140CDB
容量:139L
外寸 :W419×H1011×D399mm
内寸 : W417×H上388下588×D345mm
庫内湿度:20%~50%RH
電気代:1日1円以下の省エネ設計
その他:5年間無償保証(湿度計は3年間)
オプション で、NEW波形レンズホルダー(大) も買いましたが、値段のわりに、ただのスポンジに近い。。。
除湿の仕組み
エアコンの除湿機能のように、コンプレッサーを使っているわけではありません。湿気を吸収する乾燥剤と、その加熱による湿気の放出、そのシステムに形状記憶合金コイルによる排気シャッターが組み合わされています。安価でシンプルな仕組みで庫内の湿度を適度に保っています。 半永久的に使えるそうです。
また、除湿ユニットに、光触媒ユニットがコーティングされ(下図の赤色の部分)ています。レンズ交換などでカメラ内部についた小さなホコリなどが、イメージセンサーに付着します。光触媒によってそれを防ぐことができるのてす。また可視光LED照明(ブルーライト)を備えています。
除湿のメカニズム
半永久的に使えるというシンプルな仕組みが面白いので、東洋シャッターの取説を元に、2つに分けた図にしてみました。
1)通常は、上下にあるシャッターは図のように室内側が開いています。
2)そして、青緑色(①)の矢印で示したように庫内の空気が循環し、常に光触媒(赤色)でクリーンに保たれています。また、湿気のある空気を吸い込み(②)、乾燥剤(ゼオライト、オレンジ色)が吸湿しています。
排気のメカニズム
3)庫内の湿度が一定以上になると、下図の加熱体(濃いオレンジ色)が熱を帯びます。
4)加熱されると、形状記憶合金のコイルバネ(③)が長く伸びます。
5)それにつれて、上下にあるシャッターが矢印の方向に動きます(④)。室外側が開き室内側は閉じるのです。
6)加熱されて放出された乾燥剤の湿気は、庫外へと排出(⑤)されます。
7)湿気の排出が終わると、加熱は止まり、形状記憶合金コイルバネが元の長さに縮み、庫外シャッターも元の室内循環モードになります。
図は東洋リビングの取説を改変しています。ただし、排気時に光触媒やLEDが消えているかどうかは不明です。
便利な点など
・「デジタル一眼レフの撮像素子には、放置しておくとガスのようなゴミが付着するのですが、光触媒によってそれを防ぐことができます」とのこと。ただし、実際どの程度効果があるのか実感しにくいですね。
最後に
最初の問題の正解は③ですね。カメラやレンズには、過湿も良くないのですが、過度の乾燥状態もよくないんです。
シンプルで電気代も安くて、半永久的な除湿システム、本棚とか、ショーケースなどにも応用できそうですね。