私はフルサイズとより小さめのAPS-Cのカメラを使い分けています。イメージセンサーの違いによって、実際、何が違ってくるのでしょうか。また、総画素数との関係は? 今回は、そのあたりについて。
イメージセンサーのサイズ
以下は、カメラのイメージセンサーのサイズ(横✗縦)です。
フルサイズ:36☓24mm
以下のように、機種により多少異なります。
SONY α7RⅣ:35.7mm☓23.8 mm
SONY α7RⅢ:35.9mm☓24 mm
SONY α7RⅡ:35.9mm☓24 mm
SONY α7Ⅱ:35.8mm☓23.9mm
APS-C:23.6☓15.8mm (フルサイズ比、約66%☓約66%、面積比約43%)
マイクロフォーサーズ:17.3☓13mm(約48%☓約54%、面積比約26%)
スマホ(1/3インチ):4.8☓3.6mm(約13%☓約15%、面積比約2%)
サイズ比較、隅に寄せて表示している場合が多いのですが、センターに寄せたほうが、実際のイメージに近いですね。
イメージセンサーと画角
フルサイズというのは、かつて全盛だった35mmフィルムの実サイズです。そして、フィルムカメラ時代の一眼レフ用レンズ(オールドレンズ)は、当然、そのフィルムサイズに合わせて設計されています。
一方、小型化のためレンズやセンサーサイズを小さくしたAPS-Cなどで、オールドレンズを使うと、下の図で示したように、本来35mmフィルムやフルサイズで映る範囲の、真ん中あたりしか写していないことになります。
図で示したように、通常のカメラでは、イメージセンサーはレンズの焦点距離の位置に配置されています。
同じカメラで同じレンズ(同じ焦点距離)を使い、像ができる様子を、フルサイズは赤色で、イメージセンサーのサイズが小さい例を青色で、下の図に示しました。
イメージセンサーが小さい場合、像も小さく、被写体範囲も狭く、写る範囲(θで示した画角)も狭くなります。
同じカメラで同じレンズを使い、イメージセンサーの大きさだけを変えた場合:イメージセンサーが小さくなると、フルサイズ対応のレンズ(赤の範囲)を使っても、実際に写せる範囲(画角)は青の範囲と狭くなります。
APS-C、レンズの焦点距離が1.5倍になるわけではない
よくある間違いが、フルサイズと同じレンズをAPS-Cで撮ると、焦点距離が1.5倍になるという考え方。
焦点距離はレンズ固有の値であって、イメージセンサーの大きさには無関係です。変わるのは、上で示したように映る範囲(画角)で、焦点距離に変化はありません。トリミングになるので当然なんですが。
縦横比がそれぞれ約66%の部分を切り取っているので、画角は小さくなり、焦点距離換算だと、その逆数で、約1.5倍相当の焦点距離のレンズのより狭い画角になります。
例えば、焦点距離50mmのレンズを使いAPS-Cで撮ると、フルサイズでその1.5倍の75mmのレンズで撮ったのと同じ「画角」になるのです。
APS-C 焦点距離50mm(35mm換算75mm相当)は間違いで、正しくは、
APS-C 焦点距離50mm(35mm換算75mm相当の画角)ですね。
おいしいところが映らないAPS-C
APS-Cなどは、一番おいしいところ(一番写りのいいところ)を切り取っているようですが、実は、オールドレンズの場合、周囲は最も特徴が出やすい場所。実は、一番おいしいところはそこなのです。
下の写真は、ペッツバール( New Petzval 85 Art Lens 85mm )を使いフルサイズで撮った例(左)。2017年7月に撮影したハルシャギクです。
これが、APS-Cだと、右のように中央部分だけになり、レンズの最大の特徴である周囲のグルグルは、ほとんどカットされますね。。。
総画素数と8Kディスプレイでの表示
イメージセンサーの実際の大きさを比較しましたが、そのサイズに詰まっている画素数が総画素数です。
イメージセンサー内にあるカメラの総画素数(総記録画素数)やディスプレイの解像度などは以下のようになります。横☓縦(ピクセル)で、
α7RII:7,952☓5,304
α7II :6,000☓4,000
NEX-6(APS-C):4,912☓3,264
4Kの解像度:3,840☓2,160
8Kの解像度:7,680×4,320
はてなブログの画像サイズ(最大):1200☓800
4K、8Kとは、映像の横方向のピクセル数で、4Kは約4,000ピクセル、8Kは約8,000ピクセルです。
また、はてなブログで表示される画像サイズは、α7RIIの場合、イメージセンサーの面積の約2.3%でしかありません。ピントがきちんとあってれば、その部分のトリミングでも表示できるわけです。
ブログやSNSに投稿する画像サイズにはAPS-Cでも十分なんですが、8Kディスプレイで表示する場合、α7RIIでないと、小さく表示されてしまいますね。今はともかく、将来的にありそうです。
イメージセンサーの大きさと総画素数の関係
イメージセンサーの長さを総画素数で割ったのが、センサーの画素ピッチ(画素間隔)です。α7RIIの場合、画素ピッチ(横☓縦)は、4.53×4.52μmになります。
APS-C = フルサイズのトリミング
APS-Cカメラでフルサイズ用のレンズを使う例を紹介しましたが、逆に、フルサイズカメラで、APS-C用のレンズを使う場合の例です。
普通は、「APS-Cサイズ撮影」モードに切り替えて撮影します。下左は、あえてフルサイズモードで撮った例です。2019年4月の北アルプスです。
APS-C用のレンズ( Sigma 18-300mm F3.5-6.3 )を使い、フルサイズのカメラ(α7RII)でフルサイズモードで撮っています。焦点距離は18mmです。
APS-C用のレンズなので、フルサイズでは、周囲に黒い部分が写っています。下右の白い部分が、APS-Cでの画角相当部分です。
上右の白い部分を示したのが、以下の写真です。つまり、フルサイズカメラでAPS-C用のレンズを使う場合、フルサイズで撮影し、真ん中あたりをトリミングしているのが、APS-Cモードなのです。
なお、焦点距離が長くなると、黒い部分はさほど気にならなくなります。下の写真は、左は焦点距離189mmで、右は300mmです。雪の残る剱岳あたりです。
このレンズでは、18mmでは、ぎりぎりの部分を切り取っていますが、望遠側では余裕があります。
なので、レンズによっては、フルサイズで撮ったほうが、APS-Cモードで撮るよりも大きめにトリミングできる場合があります。
同じ画角なら、フルサイズはボケ量も大きく
コンデジで望遠レンズを使っても、背景はきれいにボケてくれません。実質の焦点距離が短いからです。撮像素子の大きさによって、ボケの量も変化します。
ボケの量(大きさ)には、4大要素(レンズの焦点距離、絞り値、被写体と背景の距離)が関係します。例えば、レンズの焦点距離が長いほど、ボケの量は大きくなります。
逆に、焦点距離の短いレンズを使っているコンパクトデジカメは、広い範囲にピントが合いやすく、ボケにくいのです。
これは、同じ画角であれば撮像素子が大きいほうがボケの量も大きくなることを意味しています。
例えば、フルサイズでAPS-Cで同じ焦点距離50mmの画角で撮る場合、フルサイズはそのまま焦点距離50mmのレンズですが、APS-Cの場合、フルサイズで焦点距離約35mmのレンズを使うことになります。
したがって、フルサイズに比べて、焦点距離が短いレンズになるため、ボケの量は少なくなるのです。
ただし、これは同じ画角での話。同じレンズを使うなら、一緒ですね。また、単純にボケの量(大きさ)のことであって、美しいボケかどうかなど、ボケの質のことではありません。
まとめ
イメージセンサーの大きさについては、APS-Cやマイクロフォーサーズは、小型軽量で手軽に望遠が楽しめるのですが、フルサイズで撮った写真の真ん中あたりをトリミングしているんですね。
なので、フルサイズ(35mmフィルム)用に設計されたオールドレンズなどの本当においしい周囲の部分が写らないのです。また、同じ画角で比べると、APS-Cやマイクロフォーサーズは、フルサイズに比べてボケの量は少なくなります。
オールドレンズを活かすならフルサイズなんですが、一方の総画素数となると、大きくプリントアウトするならともかく、ブログで楽しむだけなら、今のカメラの画素数は明らかにオーバースベック(過剰性能)ですね。
とすると、α7Sシリーズのように、フルサイズで画素数を落として感度を上げる(別の付加価値をつける)という流れに期待したいですね。