今回のシリーズ、基本的なことについて書きましたが、特に意外だったのは以下の点ですね。
・イメージセンサーは、色を感じないこと
・緑を感じる画素が他の色の2倍あること
・撮影時には、記録画素数が実質4分の1になること
・SONY α7シリーズ では、RAWデータも、画像処理エンジンで処理されていること
・SONYのα7シリーズでは、RAWデータも、JPEGと同じ方法で補間処理(色情報を追加)されていること
そして、一番意外だったのが、カメラメーカーのサイトの情報が、ほとんど役に立たなかったこと(笑)。初心者向けのパンフレットそのままの感じです。もちろん、内部技術は出さなくてもいいのですが、せめて基本的な部分は、もう少し突っ込んだ解説がほしいですね。補間処理の件も、わざわざメーカーに確認しましたし。
でないと、カメラがどんどん進歩する一方で、内部でどういう処理がされているのか、ブラックボックスになってしまいます。なお、古くから使われていることもあるのでしょう、レンズに関しては、いろいろと情報が豊富です。
関 連
意外に奥が深い:デジカメの画像処理(1)
色を感じないイメージセンサー:デジカメの画像処理(2)
RAWはスッピン:デジカメの画像処理(3)
1回めでも紹介したアナログからデジタルへの変換処理の流れです。今回は画像処理からファイルの書き込みまで。
画像処理エンジンで映像ファイルに
電気自動車の時代に「エンジン」とは古い名前ですが、画像処理システムのことです。
カメラメーカー各社によって違います。SONY のα7RIIでは、画像処理エンジン「BIONZ X」とよんでおり、システム(フロントエンドLSI)とともにイメージセンサーからの情報を高速処理するだけでなく、さまざまな処理により高画質を実現しています。名前が同じでも、カメラの機種によって、処理スピードなどが異なります。
JPEG記録では、イメージセンサーからのデジタル信号に、カメラ側で設定したホワイトバランスなどの情報を加え、画像として組み立てます。Exifデータや液晶画面表示用の画像も含まれます。
画像処理はRAWデータにも
一般的に、RAWファイル出力では、A-D変換されたデジタル信号をそのまま出力するとされていますが、SONYのα7シリーズでは、画像処理エンジンの処理はRAWファイルに対しても行われています。下は、SONY:α7RIIの特徴から。
イメージセンサー内でAD変換された14bitのデジタル信号を一度16bit処理してから、RAW画像に14bit出力することで、より豊かな階調表現と高画質を実現します。
他のメーカーのミラーレスの画像処理エンジンは以下の通りですが、RAWファイルにも処理を行っているかどうかは不明です。
CANON EOS-R:DIGIC 8
NIKON Z6/7:EXPEED 6
JPEGの画像圧縮
JPEGファイルもRAWファイルも電子データです。デジタル信号とか画像ファイルとかと区別しても、JPEGファイルが汎用性のあるソフトで見ることができるだけの話で、所詮、いずれも、0と1からなるデジタルデータです。
その本質的な違いは、画像圧縮にあります。
JPEGファイルでは、画像情報の一部を削除し不可逆的に圧縮します。JPEGの色情報は1つの画素に各色8ビット(合計24ビット)しかありません。1つの色につき14ビット程度の精度があるイメージセンサーから受け取った情報を大幅に切り捨てるのです。
JPEGファイルのイメージ。最終的に画像情報は圧縮され、一つの画素に、RGBそれぞれ8bit(合計24bit)の色情報が保存されます。通常のディスプレイと同じく、一つの画素で全ての色を表現することができます。
JPEGという名前は、静止画の画像圧縮の方式を標準化したグループの名称(Joint Photographic cording Experts Group)です。
詳細は省きますが、一般的に、「人間の目は画像の低い周波数成分には敏感だが、高い周波数成分にはあまり敏感ではない」という特徴をうまく利用して、高周波成分を減らすことで、画像の見ためをできるだけ変えずに、データ量を削減します。
したがって、特に、線画やイラストのように、明暗の輪郭がシャープに表現されている場合、圧縮による劣化が目立ちます。いわゆるモスキート・ノイズが生じます。
RAW記録とRAW現像
■RAW記録
RAW記録では、イメージセンサーからのデジタル信号をそのままか、SONYのように画像処理エンジンで処理し、Exifデータや液晶画面表示用の画像(仮の現像映像)を追加して記録されます。
RAWファイルは、汎用性のある画像ファイルではないので、処理をしないと見ることはできません。画像になる前なので、フィルムの現像前に似ています。
■RAW現像
RAW現像では、イメージセンサーからのデータに対し、ソフトウェアでホワイトバランス、コントラストなどの画質調整を施します。最終的には、ファイル圧縮しJPEGなどの画像ファイルとして出力します。
カメラメーカーがカメラ内でやっている処理を自分でやるだけです。写真に応じた対応が可能になります。
RAWファイルは、現像処理することが前提のデータです。例えれば、化粧していないスッピン状態ですね。
ですから、RAWファイル自体や現像しない撮ったままの写真は、現像の余地を残しどちらかというと地味で、化粧(現像処理)するから美しいのです。
その意味では、カメラ内のピクチャーエフェクトなどの画像処理で仕上げるJPEGのほうが美しい場合があります。
なお、現像ソフトでは、RAWファイルそのものを修正しているわけではありません。そもそも、現像ソフトでは、修正はできないのです。
コントテストなどで、写真の修正が問題になることがありますが、RAWファイルは修正できないのですから、入賞作品について、RAWファイルを提出するようにすれば、現像なのか修正なのか、確認できると思うのですが。
まとめ
デジカメの写真、JPEGファイルはファイルサイズも小さく、簡単ですが、仕上がりはカメラにお任せです。
一方、RAWファイルは、編集されることが前提のほとんどスッピンのファイル。手間がかかりますが、その分、おきまりの画像処理によるJPEGより、自分好みにできるのです。
また、SONYのα7シリーズの場合ですが、RAWデータに対しても画像エンジン処理や補間処理が行われており、RAWだから全くの生のデータというわけではないのです。多少は、薄化粧している感じでしょうか(笑)。