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スイセンを美しく:スポット測光と色飽和補正

桜の足元でたくさんのスイセンが咲く季節ですね。実は、黄色一色のスイセン花、輪郭部分までくっきり撮るのは意外と難しいのです。

全部が同じような黄色なので、色飽和して花がはっきりしない場合があります。こういう色飽和、赤や黄色などの暖色系で起こりやすい現象なので、これから咲いてくるチューリップなどでも注意ですね。

今回、撮影時に測光パターンを変えて撮る方法と、撮った後から修正する方法を紹介します。

 

 
測光モードの比較:3つのパータンを比較
ヒストグラムの確認:測光モードの違いをヒストグラムで確認
撮影後の修正:撮った後にライトルームで修正
色飽和の補正:ハイライトをマイナスに
ヒストグラムの変化:ヒストグラムで変化を確認
あえてハイキーも♪:要は何を表現したいのか、ですね
まとめ:スポット測光のメリット

 

測光モードの比較

スイセンにもいろいろありますが、今回は黄色一色のラッパズイセンです。測光モードを変えて撮ってみました。

 

測光モード:被写体の明るさを測定するパターンのことです。

カメラが露出を決めるには、画面の明るさを測定する必要があるのですが、どの部分を測るのか、その方法です。私の持っているSONYのα7RIIでは次の3つのパターンがあります。ただし、全体の何%程度を測光しているのか、具体的な数字は示されていません。

 

1)マルチ:マルチパターン測光のこと。初期値はこのパターンです。画面全体を複数に分割し各エリアごとに測光し、画面全体として最適な露出を決定します。見た目に近い仕上がりです。

2)中央重点:中央重点測光のことで、モニターの中央部の明るさでろシュッを決定します。画面中央に被写体がある場合です。

3)スポット:特定の部分だけで測光するスポット測光です。画面中央の十字部分の明るさで露出を決定します。逆光など、被写体の明暗の差が大きい場合に使います。

露出固定(AEロック):SONY のα7RIIでは、スポット測光の位置は中央のみで移動できません。フレキシブルスポットなどで、中央以外で(ピントや)露出を合わせたい場合、一旦、合わせたい位置でピントを合わせて測光後、AELロックボタンを押して露出を固定(AEロック)します。画面にAEロックマーク「*」が表示され、その後、画面を移動してピントを合わせても、露出は固定されたままです。

なお、α7IIIからは、フォーカスエリアが「フレキシブルスポット」か「拡張フレキシブルスポット」の時に、フォーカスエリアと連動させることができます。

 

次からの3枚の写真、レンズは Sigma 135mmF1.8DG HSM Art です。ISOは100、撮影時の露出補正はありません。また、撮ったままでライトルームでの補正はありません。

 

最初の写真、測光モードはマルチで撮ったもの。全体を測光しているため、背景も明るく、スイセンはさらに明るくなり、温かい春の雰囲気が伝わります。ただ、花の輪郭ははっきりしませんね。

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測光モード:マルチ

 

次は中央重点で。

中央にある花を中心に明るさを決定しているので、輪郭がはっきりしてきました。その分、背景は暗めに。

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測光モード:中央重点

最後はスポットで。中央やや左にあるひとつのスイセンの花だけで明るさを調整しているので、輪郭がはっきりしています。中央重点とあまり変わりません。

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測光モード:スポット

 

ヒストグラムの確認

測光モードの違い、ライトルームのヒストグラムがどう変化したか見てみましょう。 

ヒストグラムは、横軸が輝度(左端が輝度0%で純黒、右端が輝度100%で純白)で、縦軸がピクセル量を示しています。白黒のヒストグラムならカメラでも表示でき、白飛びしていないかなどの確認ができます。

ライトルームでは、色を分割して表示しています。色の基本であるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)に加えて、それぞれの色の重なったイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)と、すべての色が重なった灰色の山からなる分布です。

 

下の図では、上からマルチ、中央重点、スポットの測光モードのヒストグラムです。

マルチのヒストグラムは、黄色の山が右により過ぎている感じで、山の幅も狭めです。一方、中央重点とスポットはほぼ同じで、2つの山が左右に別れ、どちらかというと、明暗がはっきりしたコントラストが強いタイプ。黄色の山はマルチよりなだらかで幅が広くなっています。より黄色の色幅が広がったということでしょう。

 

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ヒストグラム

よく見ると、シャッタースピードも変わっていますね。中央重点やスポットでは明るさに関与する面積が狭くなるのか速くなって、1/8000秒です。

 

 

撮影後の修正

次は、撮った後から修正する場合です。レンズは、 SONY FE 90mm F2.8 Macro G OSS で、ISOは100、撮影時の露出補正は  +0.3 です。

最初の写真は、マルチ測光で撮ったもの。全部が黄色い花なので、色飽和して花がはっきりしません。黄色の部分、ベタッと同じ色で塗りたくったようです。

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ラッパズイセン(修正前)

 

色飽和の補正

簡単に補正するには、現像ソフトのライトルーム(Lightroom Classic CC)のハイライトです。

下の写真では、-75にしています(-100が最高)。ラッパ部分のディテールがはっきりしてきました。少ない色で塗りたくったようなスイセン、微妙に異なる多くの色できちんと塗り分けたようになりましたね。

やや暗くなるので、最終的に白レベルをプラス15にして、全体を明るめに調整しています。

 

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ラッパズイセン(修正後)

 

ヒストグラムの変化

上の変化、ライトルームのヒストグラムがどう変化したか見てみましょう。下の図で、上が補正前で、下がハイライトの補正後です。

 

今回のスイセンのヒストグラム、2つの山が左右に別れ、どちらかというと、明暗がはっきりしたコントラストが強いタイプ。

補正前は黄色の山が右により過ぎている感じで、山の幅も狭め。そこで、ハイライト領域(ピンク色)を左にスライドしマイナス補正し、黄色の山をよりなだらかにしています。左のシャドウ領域にある山はほとんど変化がありません。

 

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ヒストグラムの変化

ライトルームでは、ヒストグラムと階調調整スライダーが連動しています。ヒストグラムパネルの白黒バーで示した領域(左から、黒レベル、シャドウ、露光量、ハイライト、白レベル)で、例えばハイライトを、矢印のように左にドラッグすると、スライダーのハイライトの値もマイナスへと変化します。

 

最終的には、白レベル領域を右にスライドすることで、黄色の山全体を右に引っ張って移動させ、全体を明るめに調整しています。

 

暗いのを明るくするのは簡単だが

中央重点やスポット測光にすると、全体が暗くなりました。しかし、暗いのは撮影後の現像で明るく修正できます。しかし、逆に、白飛び(ヒストグラムの分布で右に偏った状態)した場合、 修正できません。

スポット測光などで、撮りたい部分に合わせるメリットのひとつは、白飛びを防ぐためでもあるのです。

 

自然な彩度を使う

なお、彩度をあげた場合も色飽和を起こすことがあります。暖色系の場合は、「自然な彩度」を使うほうがいいでしょう。ライトルームの「彩度」は画像全体の彩度を調整しますが、「自然な彩度」は暖色系に弱く寒色系を強めに調整します。

 

下の写真もハイライトを調整しています。

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ラッパズイセン

あえてハイキーも♪

以上は基本に忠実な撮り方です。これを知りながら、あえてハイキー(露出オーバー)で撮ることも多々あります。特に天気の悪い時などですね。色白は七難を隠すといいますが、全体が明るくなり、花も色飽和して色がつぶれたりするのですが、ソフトで優しい仕上がりになります。

要は、その写真で何を表現したいのか、でしょう。植物図鑑的に細部までクリアに表現したいのか、全体としてほんわか優しい春の雰囲気を伝えたいのか、ですね。

 

 

まとめ

今回はラッパズイセンを例に、測光モードによる違いと撮影後の修正の話でした。景色全体ではなくて、特に表現したい部分が明確な場合、スポット測光がいいでしょう。

スポット測光のメリットのひとつは、白飛びを防ぐことです。全体は暗くながちですが、暗いのを明るくするのは簡単です。逆に、明るすぎる(白飛び)のは修正不可能ですからね。

 

 

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